成人検査

今年の年末ボクのもとに下のような案内状が届けられた。
西野 隆 様
1月10日(祝)午前11時開会
今年成人式に出席される新成人の方は、式の30分前に市立xx会館前に集合してください。
昭和○○年4月2日から昭和○○年4月1日までに生まれた人が対象です。
今年から成人式の内容が一部変更になります。
・生涯学習課
「あぁ、ボクもいよいよ成人かぁ」
当日、特に親しい同級生もいなかったので、一人で行くことにした。
××会館前は、仲間とバイクで乗りつける者、派手な髪をした者、煙草を吸って屯(たむろ)する者、様々な"人種"が集まっている。
市の職員だろうかメガホンを手に何かこちらへ呼びかけている。
「時間なので成人式に出席する方で、女性の方は会場入りしてください。男性の方は、こちらの控え室へ入ってください」
久しぶりに会う友人との話に夢中の彼らは、職員の声に耳を傾けようともしない。
結局時間はかかったが、男子新成人は皆控え室に入った。
粗品でも配るつもりだろうか、たくさんの白い箱が詰まれたテーブルの前で、さっきの職員が喋っている。
「これから皆さんにこの箱をお渡しします。この中には」
と言って、箱から何やら取り出した。
一見、健康診断のときに着るような青い検査着みたいだ。
「皆さんにはこれを着てもらって、成人検査を受けてもらいます」
「検査って具体的に何かするんスか」
金髪のヤンキー風の男が口を挟む。
「まぁ、学校の身体測定みたいなものですかね」
職員、検査着を片手に説明を続ける。
「これを見てもらえば分かるように、診察がしやすいように、前の部分の上にだけボタンがしてあって、下はパラーっと開くようになっています。これを裸の上から直接着てください。下には一切何も穿いてはいけません」
その説明を聞いた新成人は、一様に驚きを隠さない。
「な、何もって、パンツも穿かないんですか」
「ダメです。裸の上に着てください」
周りはマジかよ、有り得ねぇーよと不満を口にしている。
嫌気が差した連中はずらかろうとしていたが、職員はそれを見つけ
「そこの君たち、この検査を受けない場合は成人として認めないから」
と、その強気な発言に一同凍りついた。
よく見ると、出口という出口は閉じられ、各位置には警備員とおぼしき人が立って、万一の暴動に備えている。外へ出ようにも警戒の目が厳しく身動きが取れない状態だ。
「では、これから順次配布していきますので、受け取った方は速やかにその場で着替えて待機して下さい」
職員はそう言うとマイクを置いて、近くの係員と手分けして検査着の配布を始めた。
新成人たちは皆一様にやり切れない表情を浮かべながら、係員の指示に従って検査着を受け取っている。ボクも仕方なく皆に同調する。
男だけとはいえこの人の多い室内で、いきなり素っ裸になるのは恥ずかしいのでトランクスを穿いたままの状態で、この検査着を着ることにした。
説明にあったとおり、前の部分がかなり開くし身長丈も短いので、手ではだけないように胸のあたりで押さえている必要があるのと、腰より下もうっかり油断していると丸見えになってしまいそうなので、下の裾も常に引っ張っておく必要がある。
まわりの連中を見ても、前が開けっぴろげになってチ○コが見えたり、前を気にするあまり後ろが尻全開だったり、かなりアブナイ格好の奴らばっかりだ。
とはいえ、仲間がいる気楽さからかお互いの格好を見てはやたら盛り上がっている。
「おまえの格好絶対ヤバイって」
「おまえの方こそチ○コ勃ってんじゃねぇか」
まわりは一段と騒がしくなる中、ひとり着替えを終えたボクは、この恥ずかしい検査が早く終わることをひたすら願っていた。
そうこうしていると、さっきの職員が辺りを見回しながら
「着替え終わりましたら、前の方から順に会場の方で検査を受けていただきます。それじゃ、 最前列にいる3名の方こちらへ」
職員に促されるまま、3人が会場へと続く扉を開けて控え室を出て行く。
しばらくすると、遠くの方(おそらく会場内)でアナウンスの声が聞こえる。
(何を喋っているのかまでは、聞き取れない)
そしてまた、しばらくすると今度は、大勢の女性の歓声で(場内が)沸いている。
そんなことが数回繰り返される。
「けっこう盛り上がってんじゃん」
「あー、早くオレの番にならないかな」
会場はいま新成人の女性と合同の検査を行っているという、根拠のない憶測が飛び交い、控え室は興奮のるつぼと化していた。
そうこうしていると、さっきの3人、ではなく2人が扉を開けて戻ってきた。
しかし、なぜか2人とも顔を紅潮させてかなり辛そうな顔をしている。
どうも様子がおかしい。
「どうした。女子と合同検査だったんだろ」
金髪のヤンキーが聞く。
「女子と合同?とんでもない。最悪だよ」
そう言って着替えを済ますと、出口の扉を開けて外へ出ていった。
「あいつ成人式受けないのかな」
「検査落ちじゃねえの」
何気なく言った冗談のつもりが、皆同じようなことを考えていたのか、
それ以降皆押し黙ってしまった。次々控え室を出て行っては、少数の人が戻ってきて帰っていく。
誰に聞いても検査の内容を語ろうとする人はいない。
ただ、共通しているのは皆一様に表情が硬いということだ。
そしていよいよボクたちの番になった。ボクを含む3人ずつが招集され、会場へと続く廊下を歩いていくと、会場のボルテージはさらに上がっていた。
会場の大きな扉をあけると、薄暗い会場、何百人という人たちが席を埋め尽くし、その前方を着物で着飾った晴れ着姿の女性が陣取っている。
そんな中、明るくライトで照らされた舞台上を見ると、真ん中ではお医者さんと思われる人が座っている。その近くにはマイクを持った進行役の女性が、観客席に向かって何やら話している。
男子新成人はといえば、それぞれがステージの中心に向かって一定の距離を置いて、気をつけの姿勢でひたすら名前が呼ばれるのを待っているようだった。
ようやくボクの番が近づき、舞台の袖の辺りに来た頃、その状況がよりはっきりと分かるようになってきた。
そのときマイクを持った女性がひとりの新成人の名前を読み上げた。
「田中雄也クン」
観客の一部からは、知人だろうか、
「雄也、頑張ってー」
という声が聞こえる。名前を呼ばれたその彼は"ハイ"とひとこと返事をすると、お医者さんのいる前に向かった。するとそのお医者さんはそこのイスに腰を下ろすよう促し、音波機を使って胸やお腹、背中といった順で診察をしていく。
何のことはない普通の診察で、立つように言うのでこれで終わりだなと思った瞬間、お医者さんは何を思ったのか、その彼の着ている検査着を大きくお腹の辺りまで
めくってしまった!!
客席に背中を向けて立っているので、当然ながら客席からは彼のお尻が丸見えだ。
どこか晒し者の感じを受け なくもないが、司会者(?)の女性や観客、当のお医者さんもまったく気にする様子はなく、しかし何やらしきりに手先だけを激しく上下動させている。
そして、次の瞬間ボクは言葉を失った。
何と、こともあろうか、お医者さんのその右手はその子のチ○コを掴んでいる。
そしてしきりに何やら叱咤している。
すると、彼は上ずった声で「うぅっ...」と言った直後に白い液体がピュッと辺りに撒き散らされた。精液に違いなかった。
当然、彼の顔はかなり赤くなっている。
しかし、お医者さんは相変わらず平然としている。
「オーケー、じゃあ今度は後ろ向いて」
しかし、お医者さんに背中を向けるということは、観客に対して前を向く態勢のため、今度はチ○コが露わになってしまうということになる。
それを嫌がる彼は慌てて両手で隠そうとするが、
「気をつけの姿勢で!そう、お尻を突き出すかたちで」
とお医者さんに注意され、彼は股間を隠すことも出来ないまま、可哀想に赤い顔でうつむいている。
ボクはもう見ていることが出来なかった。お医者さんは彼のお尻をつねってみたり広げてみたり。
一連の検査が終わり胸の辺りまでたくし上げられた検査着を元に戻すことが許され、彼は恥ずかしそうに急いで元に戻していた。
お医者さんは近くに立っている進行役の女性に診断書らしき紙を一枚渡し、渡された紙を見た女性はマイクで
「おめでとうございます!ご家族の方、雄也クンは成人になられましたよー」
客席は拍手に沸く。
「雄也おめでとー!!」
知人らしき女性からの声が聞こえる。
「合格された方は会場の席にお座りください。はい、皆さん今一度彼に大きな拍手をー」
少しでも暗い場所を歩きたいはずの彼に、追い討ちをかけるかのようにスポットライトが差し込む。
そして係員は、ボクたちに前の人の行動に行動するよう指示してきた。
ここまで来ると、もう"まな板の鯉"の心境だ。
「はい、どんどんいきましょう」
そんな感じで次また一人と、事務的に辱めを受けさせられていく。
気付くと、ボクの番になっていた。
「西野隆クン」
緊張した面持ちで、医師の下へ向かう。
しかし緊張のあまり床と床の段差につまずきそうになり、客席から失笑が漏れる。
お医者さんに座るよう促され、例に倣って胸、お腹、背中の順で診察をしていく。
そして立つように言われ、医師自らボクの検査着をめくる。前に受けた人と違って、今度は胸の辺りまでめくれてしまった。ボクの検査着は肩の部分を残して、あとは限りなく全裸に近い格好になってしまっている。
"あぁ、これじゃ席にいる女友達からも丸見えだろうな"そう思うと、とてもやるせない気持ちになった。
そしてお医者さんの"魔の手"はスッと、ボクの股間へと伸びてきた。
ごつい手がボクのアレをピストン運動のように激しく動かしてくる。
クチュクチュと音がしている。舞台から近い一般の席なら届きそうに思えた。
「あ...あ....あ..ふわへぁーん」
ボクは思わず、大きな声が出てしまった。
と、同時に大量のしぶきがお医者さんの手にかかってしまった。
僕の様子をつぶさに見ていた観客席からは失笑とも取れそうな笑い声が聞こえてきた。
お医者さんは、
「おぉ、元気なのは結構だが、これくらいもガマン出来んようではな。。」
そう言うと、机の上のペンを手に取り、診断書に結果を書き記した。
「いつもはこんなことないんですけど...」
僕の言葉は言い訳っぽく聞こえたかも知れない。
お医者さんの出した診断書を確認した進行の女性は、「あー、残念ながら不合格ですね。親御さんもさぞご無念なことだろうと思います」
早くこの場を去りたいボクをさらにあざ笑うかのように、司会者の女性は突っ込んだ質問をぶつけてくる。
「こんな結果になってどう思います?」
「あ、、と、とても申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「来年は合格するよう、もっとご家族と練習した方がいいかも知れないね」
女性は冗談めかしてそう言うと、会場がドッと沸き返る。
そばにいた係員の女性の
「来年また案内状を送りますので、来てくださいね」というその顔も、ニヤニヤとした含み笑いを浮かべていた。
会場を後にすると、かつての同級生に会った。
「あんな格好悪い隆、最悪」
「エッチなんか10年早いわ」
といわれ、散々だった。
また来年行かなきゃいけないのかと思うと今から憂鬱だ。
 翌日の新聞のコラムには、下のような記事が。
【成人式】××市の住民と市長のある試み
成人式といえば、ここ数年荒れるというイメージが強かったが、××市では、そうした現状を踏まえて住民が意見を出し合った結果、ユニークなアイデアが生まれた。
それは、式の前に医師によって成人検査を行うというもの。
成人検査は、これまで形式的に行われていた成人式を"心身ともに健全に成長したことを確認する場にしたい"という意向を受けてのもの。
また「問題行動の多い男子については原則"公開"とすることで、式を厳かな雰囲気のもとで挙げることができた。来年以降もこの試みを続けていきたい」と同市長は力強く語った。
住民も「これからは、ただ年齢が来たから祝うというのではなく、本当にその資格があるのかどうか我々住民の目で確かめていきたい」という。
検査によっては不合格となることについても、「人それぞれ当然個人差がある。今年認めなければならない理由はない」という。