相撲部

帰宅部だったマコトはある日相撲部顧問の先生から声をかけられた。
顧問だけに体格のいいその先生は、ウチの相撲部に入ってくれと言う。
何でも自分を含めて4人しかいないらしい。
とにかく部員が少ないからと、半ば強引に入部届けにサインをさせられてしまった。
帰り際、道場でマワシの締め方だけ教わると、
「明日は授業が終わったらすぐに練習のできる準備をして待っていろ」
と言われ、その日は学校を後にした。
家に帰ると、父親が昔使っていたマワシを持ってきた。相撲部入部という話はすでに
知れ渡っていたようだ。
マコトの親はPTAの役員ということもあり、以前から顧問の先生とは親交があったのだ。
その日の夜、マコトは部屋でマワシを締める練習をしていた。
「はぁー、何でよりによって相撲部なんかに・・・」
マコトは白いブリーフの上に巻いた自分のマワシ姿を見つめては深いため息をついた。
翌日の放課後、マコトはすぐに部室へむかった。
人一倍シャイなマコトは、部室に他の生徒より早く来て締め込みを済ませることにした。
40畳ほどの道場は、ど真ん中の土俵があり、三方向がガラス張りの窓になっていて、
外からはいつでも稽古が覗けるようになっている。
部室はというと、土俵のある練習場の隅の一角に、畳が申し訳程度に10畳ほど敷き詰められているだけだった。
扉はもちろん衝立ひとつない。
”うわー、こんな所で着替えるのか、、誰かに見られたら恥ずかしいな”
そう思いながら着ていた制服とズボンを脱ぎ、白いブリーフ一丁の姿になった。
他人と一緒に着替えるのが嫌で、体操着ですら家で着てから登校していたマコトが学校でこんな格好になるのは、小学校の時の身体測定以来だった。
パンツ一枚で廊下を移動していたとき、後ろを歩いていた札付きのワルにいきなりパンツを下げられ、前を通りがかった数名の女子にチンチンを見られてしまい、1ヶ月ほど女子の間ではその噂で持ちきりになったことがある。その経験からパンツのゴムに手をかけたところで、何度も躊躇した。
昨日、自分の部屋でマワシを着けたときはどうしても5分程度はかかってしまっていた。
その5分はマコトにとってとてつもなくつらい緊張を強いられる時間だった。だからその間は絶対に誰も来ないことを確認しておく必要があった。
マコトは部室の扉の内側から用心深く外を目で追った。
ほど遠いグランドでは、サッカー部と陸上部の連中が練習をしている。近くの校舎にも人影は見当たらない。
「よし、誰も来ていない」
安心したマコトは扉を閉め、定位置へ戻った。
「ふぅーっ」とひとつ大きく深呼吸すると、白いブリーフを一気にくるぶしの辺りまで下ろした。
上の天窓から入ってくる冷たい風が無防備なマコトの股間をすぅーっとなでていった。
気づけば目の前には幾分ほこりのかぶった直径2mはあろうかという大鏡が、褐色に日焼けしたマコトの
裸体を映し出していた。マコトは自分のあられもない姿に驚いて、思わず後ろに仰け反ってしまった。
”こんなことでビックリしてる場合じゃない”
マコトは持ってきたマワシを手に取ると、それを自分の体にピタッと当てた。そしてアゴでその先端を挟み、自分の股間を確めるようにしながらマワシをお尻へ通した。
その瞬間、チンチンがマワシに擦れて痛かったが、それ以上にこんな格好を他人に見られることの焦りから
急いで腰に巻きつけた。
そしてマワシを2回転ほどさせた所でマコトは少々の違和感を感じた。マワシと体の間に隙間が出来てしまい、チンチンがうまく中に隠れないのだ。
それならと前の部分を引っ張ると、今度はお尻の割れ目が見えてしまうという悪循環に陥っていた。
「くっそー、昨日はうまくいったのに、、」
マコトの悪戦苦闘ぶりはしばらく続き、結局一度締めたマワシをやり直すため、外し終えたその時だった。
「あら、マコト君じゃない?」
どこかで聞き覚えのある声だと思って、辺りを見回したが誰もいない。え、どこにいるんだ?
そしてふと何気に鏡を見てみると、全裸の自分が映っている左斜め後ろに、窓から顔を出している同じクラスの裕子がいた。
「わぁ、見ぃーちゃった! マコト君のおチンチン」
「お、おい、何してんだよ」
マコトは慌てて背中を裕子に向ける形でしゃがみこんでしまった。
裕子はそんなマコトを見下ろすように、窓にもたれかかっている。
「普段私たち女子に自慢してる割にちっちゃいよねー」
「な、何でお前がいるんだよ」
「あら、私、相撲部のマネージャーなのよ。夏休み終わって
 顧問の吉田先生から新入部員のサポートをしてほしいって
 頼まれたから来たのよ。昨日マコト君入部の件も聞いたわ。」
「そんなこと聞いてないぞ、だいたいここは女が入って...」
「そんなことより早くマ・ワ・シ着けたら? ここからだとチンチン丸見えよw」
見えないようにしてしゃがんでいたのが、実は大鏡によって窓にいる裕子の位置から丸見えだったのだ。
マコトは慌てて、そばにあった下着で前を隠しながらマワシを締めた.....というより体に巻きつけた。
「そんな汚いのじゃ駄目よ、すぐにほどけてしまうわ、こっちに洗いたてのマワシがあるから」
そう言って裕子は、外に干されていた、やや使い込まれた感のあるマワシを手に部室に入ってきた。
そして、あっけに取られているマコトの外れかけのゆるゆるマワシをサッと剥ぎ取ると、
「うーん、でも幅が??」
と言いながらマコトの腰とマワシを見比べている。
「そ、そんなの、どれでもいいよ」
マコトがそう言うと、
「駄目よ、体型に合ったものを選ばないと。」
と、結局新品のマワシを袋から取り出してきた。
「これなら、さっきみたいにおチンチンが外に出ちゃうこともないはずよ」
どうやら先ほどの苦闘ぶりをすべて見られていたようで、マコトは体中が赤くなるのを感じた。
自分でやるとばかりにマワシを裕子からひったくると、マコトは、裕子の視線を背中で感じながら、ようやく
部室の端にあるロッカーの陰で締め直すことができた。
すでに部活の初日の半分が過ぎようとしていた。
顧問の吉田先生は部員同士で試合をすると言い出した。
マコトにはある不安がよぎった。
一度でもマワシを着けたことのある人なら分かるかもしれないが、肌の感触や密着度で自分のマワシがゆるいか
キツイかが分かるのものである。
いまマコトは感触、密着度から頼りない状態であることを身をもって感じていた。このまま取り組みを続けて
マワシを強く取られると、結果外れてしまうことも自覚していた。
マコトは必死に後ろに出ている先端を引っ張ってみた。
しかしマワシというのは構造上、緩みを調節できないとされている。だから大相撲などではゆるんできた場合、控え室で結びなおしする以外に方法はないのである。
そうこうしている内に試合は始まった。さっきまで隣にいた高野という男が上手投げで相手を負かすと、見ている人から歓声が上がり、いやがうえにもボルテージは上がっていった。
「東、たかしの海〜。西、真の山〜」
結局ここに至るまでマワシをうまく直すことができず、仕方なく土俵へと向かうマコト。だが、マコトには
ある奇策が浮かんだ。
”相手にマワシを取られないように逃げ回ってテキトーに押し出されて負けよう・・・”
行司役の良雄が声をかける。
「見合って見合って〜、はっけよーい。。。残った!!」
マコトはたかしに近寄ることなく、端から端を持ち前の逃げ足で駆け回った。
対するたかしは体格が立派で細かい動きが苦手なので、なかなか追いつけない。すると相手のチームから
「ダセー、逃げ戦法かよ」「全然面白くねえぞ」
などの野次が飛んだ。
自分のチームからも
「おいおい、逃げ回ってばかりじゃ勝てないぞ」
「しっかり組め」という声が聞こえた。
だが、組んで勝負することは絶対に避けなければいけない。マコトはいかに善戦して負けるかだけを
考えていた。
しばらくたかしが追いかけてはマコトは遠のくということを繰り返し、開始から30秒ほどが経過していた。
相撲にしては長い取り組みである。
それゆえ応援はどこか冷め切ったムードになっていて、冷たい視線のようなものをマコトも感じ取ってはいた。
そんな雰囲気に一瞬気の迷いが生じたのか、今まで幾度となく突っぱねてきたたかしの手が、今度は自分の手をすり抜けて、マワシをしっかりと掴まれてしまった。
「うぅっ」
声にならない悲鳴にも似たうめき声がマコトの中でこだました。
何とか体を捻ろうにもたかしの両手がそれを許さなかった。マコトも同じようにしようとするが、こちらの手はマワシに手が届きそうにない。ボクシングでいえば3階級ほどの差がある体重差を見れば、単純に勝負は火を見るより明らかだった。
あとは一刻も早く皆が納得のいく負け方をすることだった。
しかし、まるで横綱が豆力士をもてあそぶ様に、たかしは足が付かない高さまでマコトを吊り上げてみたり、足による小技でひっかけ転びそうになるところをわざと手を貸してみたりと、己の技を見せ付けるがごとく一向に勝負をつけようとしない。
「アハハ」「やれやれー」
また周りもそれを楽しんでいるようでもあった。
そうこうしているうちに2分が経とうとした頃、
「そろそろ決め技に入れー」
と、双方のチームから決着を求める声が飛んだ。
すると、今まで小技を使っていたたけしが、投げ技で決着に入ろうとしているのが分かった。
今までにないような力でマコトの体がたけしに引き付けられていった。だが同時にマコトの
マワシの結びも解けていく感じがした。
「あ、ヤバい、、」
執拗にマワシを掴むたけしの手を必死に振り解こうとしたが、それは無駄な抵抗と思えるほど、完全強固なものだった。
たけしは不敵な笑みを浮かべていた(様にマコトの目には映った)そして、次の瞬間たけしの手によってマコトのタテミツが上へとゆっくりと持ち上がる。それに伴ってマワシはお腹の上の辺りにまで吊り上がってしまった。
そしてその辺からゴソゴソとにわかに囁き声が漏れ聞こえてくるようになった。
何を言っているのかは分からなかったが、明らかにマコトの方を見て喋っているのは分かった。そうしてたけしはまた小手先の技を楽しむように吊り上げを繰り返していた。
そうこうしているうちにマコトはまたひとつ何か結び目のようなものが解けた感触がした。
「まじでヤバいって、、」
これにはマワシを掴んでいるたけしも気付いたようだ。
ふと目が合ったときマコトは哀願するような目で合図を送ったのだが、たけしは逆に気付かないフリを装った。
そしてたけしが力いっぱいマコトを投げ飛ばそうとする体勢に移った次の瞬間、、、
”シュルルルルル”
それまでの取り組みの激しさを象徴するようにそんな音が聞こえてきた。
たけしが掴んだマワシとマコトの体がこのとき見事に離れ、投げ技を受けたマコトは数メートル先に飛ばされた。
その光景に呆気にとられる観客。見れば一目瞭然だった。
大勢の観客を目の前にしてマコトは布切れ一つない、一糸纏わぬ姿でひっくり返っていたのだ。
そして水を打ったような長い沈黙の後、関を切ったように笑い声が聞こえてきた。
「ギャハハハハ、まわし取れてやんの」
「チ●ポ全開だよー」
「マコトがスッポンポンをお披露目だァ!!」
みんな口々に騒ぎ出した。
マコトは自分でも何が起こったのかが分からず、その場で呆然とするしかなかった。
しかし女子の悲鳴にも似たような、高い声の連鎖にマコトは我に返った。その中には女子マネの
裕子もいて、運が悪いことに友達3人を引き連れていた。
しかしその時のマコトは自分がチンチンを曝け出したまま立ちすくみ、目の前の女の子たちがそれを直視している
ことを現実として受け止めるだけの心は持ち合わせてはいなかった。
マコトはいつの間にかその場で気を失ってしまったのだ。
その後のことはあまり憶えてはいないが、薄い記憶を辿ると、このあと女子を含め観客が見守る中、部員たちに抱えられ、外気に当てるため、外のベンチで局部に小タオル一枚を載せたただけの状態で一時間ほど安静にさせられていたような気がする。
その間、他のクラブの連中も来て何やらケータイを操作するのが見えたり、マッサージまがいの事をされた気もするが、実際何をされたのかは分からない。
マコトはあの試合ことを理由に相撲部を辞めることを顧問に告げた。
その帰り際、、、
「マコト君、相撲部辞めるなんて許さないわよ。学校の女子全員におチンチン見られてもいいの?」
マコトは何のことだか分からなかった。
「辞めるんだから、もう二度と見られる心配ねえだろ」
「フーン、見られてもいいんだ、、」
「見れるもんなら見ればいいだろ」
翌日、学校にある各個人用のパソコンには、土俵にたった一人仰向けにされた男子の全裸画像が電子メールで届けられていた。