水着の欠陥

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お詫びと回収のお願い
「スイムウェア」をご使用のお客様へ
 平素は弊社製品をお買い上げいただき誠にありがとうございます。
 さてこの度、弊社が販売いたしました「スイムウェア」に関しまして、内側のメッシュ部分が、陰部の皮膚を挟み、皮膚等を傷つける恐れがあります。
 つきましては、事故防止の観点から、商品を回収いたします。
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皮膚に怪我、あるいは違和感を感じた生徒は、学校指定の診療所で受診することになっていた。
雅紀も長時間無理して着用していたためか、陰部の皮膚にブツブツの跡ができていたことが気になって、診療所へ行くことを決めた。
雅紀は自宅から歩いて10分のところにある診療所の前に着くと、入り口に立てかけられた大きな看板に目が入った。
『欠陥水着における臨時検診、実施中』
辺りを見ると、それを見て中に入っていく生徒たちが他にもいることに気がついた。外から中の様子を見ると、
大ホールほどの広さの中、はるか遠くのほうで自分の番を待つ人の列が見える。一見、男女の区別をしている様子はないが、前のほうに上半身裸の男子、後のほうに体操服姿の女子という振り分けをしている看護師の女性の姿だけは確認できた。
雅紀は若干の嫌悪感にも似た気まずさを感じてはいたものの、ここへ来てしまった以上、今更引き返すわけにもいかないため、仕方なく、先に入った子に倣うように中へと入っていった。
すると案の定、先ほどの看護師の女性が、自分を見つけるなり、男子のいるグループの最後尾に手を引いて連れて行かれた。
そして受診のためそこで上半身裸になっておくように言われた。
そしてその場所で初めてこの検診の全貌が明らかになった。
男子と女子の最前列の生徒は、いずれも一番前に並んでいたが実際には男子が最後の自分が終わった後、女子が受けるという流れであることが分かった。
だから、男子が受診する様子を最前列の女子は最後まで見届けることになる。
男女の性差を考えればそれも無理はないかと、雅紀が考えを改めて、前で行われている様子をふと目線を移したそのときだった。
雅紀はその光景にがく然とした。
さっきも言ったように女子が待機する場所からいくらも離れていないその場所で、なんと男子生徒がスッポンポンの丸裸で女医の前に立たされているではないか。ここからではいま全裸の状態で立たされている男子生徒はほとんど横からしか顔を窺い知ることは出来ないが、口はぐっと真一文字に結んで、下の方を見れば女子の目が怖いと思っているのか、ただひたすら女医のされるがままになっている。
後ろというより、ほとんど真下で待機する女子はといえば、一人の子はただ黙ってしかし目は爛々とその男子生徒の肢体を凝視している。
また、別の子は後ろの子と前の男子生徒を交互するように振り返っては、妙に気分が高揚しているのを抑えられないといった面持ちで談笑している。
さらに後ろの子に至っては、手を口に押さえながら"見ちゃった"と言わんばかりの口の形で遠く離れた子にジェスチャーを送っている。
真っ裸で受診する緊張感からか静まる男子群に対し、ざわざわと異様な雰囲気に包まれる女子の群れ。
しかし、それは雅紀自身にとっても他人事ではない。
こんな衝立もない、ただっぴろい場所で最後の砦とも言えるこのパンツを下ろさなければならないのか。
それに見ていると、どうもそれを足元へ下ろすだけではなく、完全に抜き取って検査を受けねばならないようだ。
それが一対一のときならまだしも、同じ年頃の異性に自分のハダカを見られてしまう悔しさといったら、今まで想像すらし得なかった。
きっと、彼女たちは自分が脱がせられるところから始まって、そこから目を瞬きすらせずにじっと見つめてくることだろう。
自分のおちんちんやお尻を見て何を思うだろう。何も感じないことはない。
きっと他の子との特徴を見定めて、後で友達の間で噂のネタにしてしまうのだろう。
そうして客観的に見た自分という記憶を、彼女たちは脳の片隅に永遠に残していくのだろう。そして事あるごとにその引き出しを開けて、自分の都合のいいように利用されてしまうのだろう、と。
そう考えると、自分より先にパンツを下ろされた友人の無念そうな表情を見るにつけ、ことさら自分のことの様にひどく胸に染み入るものがあった。
この状況で唯一の救いになるものといえば、同校の友人が多数受けていることでお互い一種の連帯感のようなものが共有できていることだろうか。
そのおかげで雅紀は気を紛らわすことにはなったが、それでも体操服をしっかりと着用した女子が見守る中、友人が全裸で順番に受けさせられる光景は自分も同じ男子としてとても安穏としていられる雰囲気ではなかった。
雅紀は、服からパンツすべてを取っ払い、すぐ目の前で一糸纏わぬ状態で立っている友の姿が、まるで悪い夢でも見ているようでとても信じられなかった。
雅紀の視線の数十センチ先に、自分も良く知る友のお尻の割れ目がはっきり見えるのである。
”お互い見ないでいよう”
ついさっきお互いが約束したことだった。
自分が見たことが相手に分かれば、相手も自分を裏切ることは目に見えていた。
だからこそこの約束にはとてつもない重みがあった。
当初、雅紀は友の番のとき目を瞑っていようと考えていた。
しかし、見てはいけないと思いつつ見てしまうのは人間の本性だったのかもしれない。
雅紀は興味本位から相手の目がかち合うことを承知で、目を開けてしまったのだ。
友人のパンツはすでに下ろされていた。
医師に診察を受けながら、友人は先ほどの約束を
確認する意味で、もう一度自分の方を振り向いてきた。
雅紀は友人の視線に一向に取り合わず、ただ下を向いて見ていないフリを決め込んだ。だが、この行為こそがすでに友を欺いていたのかもしれない。
友人はこのとき雅紀の行動に多少なりの不安を抱いたが、雅紀を信じるしか方法がなかった。友人は裏切られるのが怖かったのか、それともそれが分かるのが怖かったのか、その後は決して振り向こうとはしなかった。
それよりただ大勢の同校の生徒がいる中で、自分一人だけが一糸纏わぬ状況でいさせられたことが、何より恥ずかしかったようだ。
ほどなくして束縛から解放され、安どの表情を浮かべる友人。
それは同時に、”次はいよいよ雅紀の番だぞ、せいぜい頑張れよ”
という友人の無言の投げかけでもあった。
雅紀、意を決したように助手の女性がいる真横に立ち、目の前にいる医師に丁寧に会釈をした。
すると、医師は雅紀の顔を一つ見た後、座っている椅子をざっと雅紀のほうへ手繰り寄せ、雅紀のパンツのゴムに手をかけた。雅紀、ごくりとつばをひとつ飲み込んだ。
医師にもそれが聞こえたのか、それが合図となって一気に雅紀の穿いていたパンツを足元に引き下げた。
それまでざわついていた室内がシーンと静まり返る。
それは皆の視線が雅紀の裸体に集中していることを意味していた。
どんなときでも、人のいる前では常に身に着けてきた下着だが、それが一瞬でも自分の体から離れるときの心許なさといったらなかった。
医師は雅紀のパンツを横にあった脱衣カゴに置くと、雅紀のおちんちんを特別大きなレンズを持ち出して、ジロジロと見つめ始めた。雅紀のおちんちんは備え付けのスポットライトと特大レンズで徹底的に調べ上げられた。
レンズに映るおちんちんの様子は、雅紀は当然のことながら最前列の女子の目にも丸分かりだった。
雅紀は横目でそれが分かっていたから余計に恥ずかしかった。
正直なところ、雅紀にとって受診の間聞こえていた女子の声は予想していたほどあまり気にはならなかった。
が、あの友人と同じで目だけは誰とも合わせることはできなかった。
紅潮しきった顔のまま、横で意味ありげに薄笑いを浮かべる若い看護師につまみあげられたパンツを雅紀は慌てて取り返すと、この場所で着替えるのも具合が悪いと思い、裸に着衣を腕で抱いた状態で人気のない場所へ急いで移動し、服を着た。
だが、自分の番が終わると、こんなにも気持ちが緩むものなのか、同じ学校の男子が次々にストリップをしている状況を少しでも見ていたいと思うようになった。
また、女子がどんな表情で男子を見ているのかも気になってしばしば、女子と男子の様子を見比べたりもした。
しかしこの後、約束を交わした友人と大喧嘩になった挙句、ついには縁を切る羽目になった。
「○○クン、ずっと△△クンのオシリ見てたネー」
同じクラスの女子の何気ない一言で、あの日以来、雅紀はその友人と口も聞けない状況がずっと続いている