着衣水泳

今日は着衣水泳の日。
今日のこの授業(3限目)のために濡れてもいい服をということで、ジャージ、薄手のシャツなど、皆それなりに授業後の着替えのことを考えて、軽めの服装が目立っていた。
〔2限目と3限目の休み時間〕
だけど、着衣水泳だから着替える準備が必要なくてのんびりしていたら、お前らなに考えてんだ、と。
マリオ(ファミコンゲームでおなじみ七三の髪型、立派な口髭から生徒の間で付けられた)の言葉に、みんな面食らった顔でいると、マリオ、お前ら今日がどれだけ大事か分かってないと僕らを一喝。
とにもかくにもプールサイドに向かうよう指示を出し、教室を後にした。
”え、水着っていらないんだよな??”
”着衣水泳だからいらないだろ、フツー”
”そっか”
〔3限目〕
かくして、水泳の授業は始まった。僕らはいつもと勝手が違う雰囲気のまま、フツーの格好で前半(フツーの水泳)の授業を受けていた。
プールサイドの対岸ではちょうど女子が水に濡れたTシャツ姿を披露している最中だった。
夏本番、久々に見るリアルな胸の谷間が、とても僕らには刺激的に見えた。後姿を見ればまたまた僕の目を釘付けにさせる、水に濡れたブルマの数々。思えば、僕らがあんなの着てたら恥ずかしいだろうなという気もしながら、女子が着るからやっぱり自然なんだろうな、なんてことを思っているうちに、、、
バシッ/
いきなり後ろから紙束の衝撃が。
「くそっ、誰だ」
驚いて振り返ると、そこにはマリオのとても威厳のある、いかつい顔が間近にあった。
「ボーッとしてんじゃねぇっ」
言われて気が付くと、飛び込み台の前にはもう誰も並んでいない。
しかし僕の後ろには大勢の生徒が並んでいた。
”い、いけねっ”
バシャッ!!
僕はマリオに尻を叩かれるようにして慌てて水に飛び込んだ。
いちいちマリオの言葉はムカつくけど、でもやっぱりさっきの女子の眩い光景は忘れることは出来ない。
吸い付くような柔肌、ナデナデしたくなるようなお尻のライン、水の中の僕はここから10メートルほど先に見える、カモシカのような細い足の群れに見とれていた。
”そうらっ、足引っ張っちゃうぞ”
「!!!(ガボボッ....)」
と、いきなり水の上から鋭い足蹴りが僕の背中を命中。
底の硬い硬いコンクリートにモロに腹を打った感じだ。
僕は潜水艦みたいに恐る恐る水面に浮上してみると、やはりそこにはまたまたマリオのドギツイ表情が。
「もう、お前は学校やめちまえ」
(ブクブク....)
手で顔面を水の中に押し付けられること20秒だったか。
恐るべき鉄拳制裁を受けた後、ようやく許しを得た。
ダメだ、ダメだ、もう妄想はやめよう。
ある種自分の世界に入ってしまうと、目の前のことすら見えなくなる。いつも思うことだけど、なかなかそうは上手くいかない。
”キャッ、キャッ”
”もう、やだー”
どこかの海水浴客みたいにはしゃぎまわる女子たちを横目に、もう"仏(マリオ)の顔も三度まで"と自分を追い立て、見て見ぬフリでその場をやり過ごす。
まぁ、そう思うと気持ちも落ち着きを取り戻し、やっといつも通り一通りの泳法を100(m)ずつ流しで泳ぐことに集中できた。
「えー、今から着衣水泳をします。」
プールサイドで待機するようマリオに言われた僕らが待っていたその先に待っていたのは、なんと意外にも若い婦警さんだった(ラッキー!!)。
年齢は20代後半くらいだろうか、背が高くとてもスマートで顔立ちもよく髪は少し染め気味で、オシャレなメガネが特に印象的だ。
この着衣水泳の授業は女子も合同で参加とあって、婦警さんの指示で、僕らの隣にはピッタリと体を近くに寄せるようにして色っぽい女子が座っている。
「え〜、これからの時期、家族で海や川へ行くことが多くなることと思いますが、くれぐれも一人で....」
水着の上にTシャツを着てそれをお腹の辺りで絞るようにして結び目を付けている婦警さんがとてもセクシーに見えた。
「....は、危険ですから....」
Gカップ、いやいやHカップはあるだろなどと、クラスの同志は婦警さんに夢中である一方で、それを女子に冷ややかな視線で制されながら、それでも僕らはそれを止めないのであった。
説明は何やらほとんど聞いていなかったが、婦警さんの美貌は十分堪能できたところ^_^で、着衣水泳の実技はいつの間にか始まっていた。
最初はプールサイド最寄の位置に座っていたためか、女子から実技が始まり、男子は体育すわりで待機。
「キャーっ」
「ぜんぜん身動き取れなーい」
「流されそう」
そう、この学校ではいち早く造波機を取り入れていて、こういうときによく活用されていた。
お決まりではあるが、童心に返る女子の反応を僕ら男子はプールサイドから悩ましげに見守っていた。
服が透けて中が見える、下はどんな下着だろうと思うだけで鼻血が出そうなほど、もうコーフンものだった。
いやはや、楽しいのは女子だけじゃない、僕たち男子も充分楽しませてもらいました^^;
かくして、女子の着衣水泳は水中では泳げる泳げないの言い合いの中、収拾がつかないまま、僕ら男子に順番は回った。
(ハイハイ、結局は難しいってことでしょ)
幾分冷めた見方で、それでも取り合えず自分たちも体験しましょうってことで、プールに飛び込んだ。
最初は早く終わらないかなと思っていた自分も、意外に波がきつくて着衣水泳が面白いことに気がついた。
(面白がってちゃいけないんだろうけど。。。)
勢いよく押し寄せてくる水に自分の着ている服がへばりつく感触というのは、気持ち悪いようでいて逆に僕には心地がよかった。
同時に手足が思うようにならない感覚というのもまた想像以上で、興味とは別にそれはそれで大いに参考になった気がした。そして、、、
「はい、それでは服を脱いでみましょう」
婦警さんのとてーも優しい言葉に、僕らは素直に横のヤツに倣うようにして上着を脱いでいく。
「全部ですかー」
ハハハッ/
笑い声も飛び交うような和やかな空気の中、何の気なしに冗談交じりに発したこの一人の男子の言葉に、婦警さんはニコリともせず真顔でこう言った。
「そんなこと、言うまでもないわね。」
「??」
「い、言うまでもないって、、、」
その瞬間、僕らの脳裏には"婦警さんの頭の中=全部脱ぐのが当然(?)"
という推測が出来上がりつつあった。
「そ、そんな僕ら下には何も、、、」
一人が発したその言葉の先には、みな同じニュアンスの言葉が共有されていたに違いない。
「そうだよ、オレたち」「な、なぁ」
そんな言葉が男子のあちこちから聞こえてくる。
しかし、、、
「今あなたたちは、服を着てたらどんなに危険かってこと学んでる訳でしょ。仮にそこのあなた、そこから泳いで岸まで上がれるかしらね」
不意に名指しされたクラスメイトは、プールサイドと自分の置かれた状況を見比べたあと、気が重そうに首を横に振った。
「そんなときに全部脱ぐのか脱がないのか、つまらないことを質問する余裕があると思う人、その人はこれ以上参加しなくてもよろしい」
さっきとはおよそ想像もつかない,もの凄い剣幕で責められ、むしろ僕らはこれ以上婦警さんを刺激する方が怖いような気がして、しぶしぶズボンを下ろすことになった。
ズボンを下ろした途端、皆一様に表情が固くなった。
それもそのはず、いま穿いている下着の下は、何も穿いていない、まさに"すっぽんぽん"なのだから。
婦警さん、女子のときは下が水着だってことを承知してた。
だから当然、男子も同じ準備をして来ていると思っている。
だけどそうじゃない、そうじゃないんだ。
その思いはみな同じで、
「あの、僕らこの下には。。。」一人が勇気を振り絞って婦警さんに打ち明けたのだったが、、、
「ほら、さっさと行動するっ」
婦警さんは有無を言わさず、僕たちに最後の一枚を脱ぐよう迫った。
"早く短パンを脱いでくれれば、こんなコトで怒らなくて済むのに"
婦警さんの口がそう言いたげだった。
横のプールサイドからはクラスの女子たちがこちらの様子を見つめている。
そんな状況でも僕らは婦警さんの言われるままに従うしかなく、最後のパンツを下ろすしかないのだった。
えーい、あとは野となれ山となれだ!
「え?え?」「何で何で」
「まさか、、」
「キ、キャーーッ!!!」
一列にずらっと並んだ僕らのおちんちん。。
派手に悲鳴を上げたのは他ならぬ婦警さんだった。
やはり僕たち男子だけ下に何も穿いていなかったことを知らなかったみたいだ。
さっきまでの優しくて気の強い婦警さんはどこへやら、すっかり動転してしまって収拾が着かなくなってしまった。
しかも知らなかったのは婦警さんだけではない。
うちのクラスの女子たちもこのとき初めて知ったのだ。
ザザザァー....
悪い事というのは重なるもので、僕たちに更なる不幸が襲い掛かってきた。
僕たちは一旦脱いだパンツを穿こうとして、どうにも思うように足が動かない。
ザザザァー....
豪雨で水かさの増した川で足を取られる子どものように、造波機の故障は僕たちの足を奪い、そしてこともあろうか、僕たちの服やパンツをも荒れ狂う渦の中へと引き込んでいった。
誰もそれを追いかけられるような状況になく、ただただ無力感だけがその場を支配していた。
その状況を"高みの見物"していたクラスの女子たちは、そのおかしさにゲラゲラと大笑いしている。
結局、この場は急遽職員室から駆けつけたマリオが事態の収拾に当たったのだけど、、、
「おい、お前たち、男子に手を貸してやれ!」
マリオが声を掛けたのは、事もあろうかクラスの"女子"だった。
先生としては至極まっとうな事を言ったつもりなのかも知れない。
しかもこの状況で誰かの手を借りずに、僕たち男子が自力でプールサイドに上がることなど確かに難しいのかもしれない。
だけどフリチン姿をむざむざ女子に見られるのと、特段命に別状のない状況下で何とか別の方法を探ってみるのとでは大きな違いがある。
「あ、あの僕たち何とか自力で上がれます」
「なーに、甘っちょろいこと言っとるか」
最後までこの手の先生が説得には一番厄介だったわけで、結局、女子の手を借りるハメに。。。
「わー、ちょっと待って、私タックンがいい!」
「あっ、それアタシがやるんだから」
「いやーだ、アッカンベー」
「ズルいっ」
クラスの女子はまるでフォークダンスで踊る相手を選ぶときみたいに、手助けする男子も友達同士で選り好みをしていた。
「じゃ、"いっせいのーで"で引き上げるぞ」
女子の手が一本釣りの竿であるなら、僕たちの方はまるでそれにかかったの鮪ような心境になりながら、、、
『いっせいのーでっ!!』
マリオの掛け声とともに、一斉に女子の手が僕たちの体を引き上げた。
「きゃーっ」「きゃーー」
「ちん○、丸見えー」「ハズカシー」
水面から半身出たところで、女子たちに地鳴りのような歓声を浴びせられ、好奇の目に晒されながら、僕たちは望んでもいない陸地へと釣り上げられた。
そして素っ裸の僕たちだけを残して、洗濯層の中のように大きな渦を巻いたプールでは、色とりどりのパンツがいつまでもむなしく廻っていた。
そしてマリオは僕たちへのいつもの説教も忘れなかった。
「お前らが他人(ひと)の話を聞かないのが悪い」
僕たちはその相手ゆえ反論できない雰囲気はあったが、しかし、男子の誰もがこう思っていた。
”すべての原因はお前だろ”と。