変わった世界

いま教○委員会が中心となって進めている運動がありました。
その運動は、現在の教育現場において混乱を招いている過度なジェンダーフリー化を抑え、かつ過去の社会に蔓延った男尊女卑の傾向を生徒に繰り返させないことが主な目的でした。
そこで、教○委員会が検討に検討を重ねた結果、協力を要請したのがCFNM推進委員会でした。そして双方が協議の結果、前述にある教○委員会の目的とCFNM推進委員会の目指す理念が一致したのでした。
一組の教室
道徳の時間、担任の先生がクラスの生徒に何やら大事な話をしているようです。
「これから学校ではCFNM教育というのが始まります」
子どもたちはおよそ聞きなれない言葉に首を傾げています。
「これまでは男性優位の時代で何かと問題があったけれど、女性が優位になれば、世界も平和で安泰のはずよ」
クラスの生徒たちは、分かったような分からないような複雑な表情で先生を見つめています。
「じゃあ、もっと噛み砕いて説明していこうかな」
「んーと、みんなはそもそも男子と女子が同じであると考えること自体がおかしいと思わない?」
先生の問いかけにみんな考え込んでいます。
「あなた達はまだ若いから男と女の区別が付きにくい面はあるかも知れないけど、それでも考え方や行動パターンなど違ったところが多々あるはずよ。じゃあ、みんなでお互いの違う面を言い合うことにしましょうか。はい、戸田さん」
先生は最前列に座るひとりの女子生徒を当てた。
「えっと、私たち女子の方が男子に比べて頭がいいと思います」
「そんなことないぞ」
後ろの席の男子がすかさずそれに反論しました。
「だって、普段からうんことかちんちんとか言って幼稚じゃん」
「お前らだって言うだろ」
「私たちそんな下品なこと言わないわよ」「そうよ」
「なるほど、女子の方が頭がいい。ほかには、じゃ高木さん」
先生は生徒の白熱する議論を冷静に見守りながらも、その合間を見つけるやいなや他の女子生徒を当てて意見を聞く姿勢を続けるのでした。
「うーん」
その女子生徒は、相違点が思いつかないと見えてその場に立ったまま考え込んでいました。
「何でもいいのよ、外見的なことでも」
先生に言われ、女子生徒ははっとした表情を見せました。
どうやら何か違いを見つけたようです。
「男の子にはアレが付いてるのに、私たち女子にはない」
アレとは、男性の股間のアレでした。
その女子生徒の思わぬ言葉に男子は一瞬凍りつきました。
「あー、アレね。はいはい分かりました、じゃ次は男子を当ててみよっかな。鈴木君」
先生は何ともないというような表情で、さらっと次の子を当てました。
「えーと、女子はオレたちに比べて足がすっげー遅い!」
「なるほど、ね」
「なのに、口は達者なヤツが多い。」
「失礼な言い方ねー、謝りなさいよ」
男子生徒の言葉に今度は女子が噛み付きました。
「だって本当のことだろー」
「はいはい、静かに。こんな風にちょっと聞いただけでもこんなに違いがあるの。だけどね、それをよく見てみるとある共通点に気がつくの。誰か分かる人いない?」
しかし、クラスの中で手を挙げる生徒は皆無でした。
「いないっか。できれば気付いて欲しかったけど、まぁいいか」
「実はね、女の子は男の子に比べて多くの面で弱い立場なの。だから昔は力の強い男が女を従えるというような時代だったわけね。これは明らかに男尊女卑と言えるもので、差別といわれても仕方のないこと。で、その後、女性にもいろんな権利や社会的地位をってことでみんな頑張ってきたの。それ自体はよかったんだけど、今度は男性と女性を区別すること自体が差別に繋がるんじゃないかってことで出てきたのがジェンダーフリーなの。一見分けて考えないということはいいようにも思えるんだけど、それが浸透してしまうと、世の中が混乱することは目に見えていたことなの。で、いまそれも改めようということで考え出されたのが、このCFNM教育というわけ。これも昔の差別を思い起こされる人もいるけどそうじゃないの。男は男の立場、女は女の立場を今一度見つめ直そうってことで、出てきたものなの。過去の反省から、男が上に立つようでもダメ、男女差をなくしてもダメ、それなら少しだけ女が優位に立つと物事が上手く運ぶんじゃないかっていうことなの。言い方を替えれば、”適材適所”って感じかしらね」
「という訳で、話は元に戻るけど、女の子が忘れ物をした場合、今まで通り教室の後ろに普通に立っててもらいますけど、男の子が忘れ物をした場合は、席で服を全部脱いでから廊下に立ってもらいます」
「えぇーっ、そんなぁ」
それまでじっと聞き入っていた男子生徒数人もブーイングを始めました。
しかし先生はそんなことなどお構いなしに、教育委員会によって通達された決定事項の用紙に書かれた内容をただ淡々と読み上げていくのでした。
「えー、それから水泳の授業ですけど、男子は水着を穿いてはいけません。次に身体検査。これは毎月測ってる身長、体重のことね。これも基本的に男子は素っ裸で行います。検査には、私のような女の先生か、もしくはクラスの女子に測ってもらって下さい」
「何で検査に女子がいるんだよ」
「いい?これは単に身体を検査するだけではなく、CFNM教育を学ぶ大切な場でもあるのよ。だからみんなこの日は絶対学校を休まないようにね」
「はーい」「はい」
しかし返事したのはやはり女子ばかりでした。
「要は女子に生まれた方がラッキーだってことじゃん」
男子生徒の一人がそうボソッと呟きました。
それを耳にした先生は、掛けていた眼鏡を外しクラスの生徒たちにこう言いました。
「性別にラッキーもアンラッキーもありません。ただ、基本的に女子と男子は違うことも事実。だから性別によって指導や対応が違ってくるのは当たり前です。それを差別だと言う人は、何も考えていない人かただのアンポンタンのどっちかになるわね」
「.........。」 
先生にはっきりそう言われ、男子生徒は顔を下に向けて押し黙ってしまいました。
「いい?これは男女差別ではありません、男女間の区別と言うのです。先生の言ってること分かるよね?」
「ハーイ」「ハーイ」
それでも返事をするのは大半が女子です。一方の男子はというと、先生の説明に納得がいかないのかじっと黙っています。
キーンコーンカーコーン♪
「終業のチャイムが鳴ったので、道徳の時間はここまで」
「次、水泳の授業でしょ。女子は早く隣の教室に行って着替えなさい。男子はこの教室で全部脱いで、廊下に整列してからプールに向かうようにね」
「はーい」「は〜い」
元気に返事する女子をよそに、それを恨めしそうに見つめる男子。
しかし、数日経った頃このクラスにも異変が起きていました。
プールで元気に泳ぐクラスの生徒たち。そこには自然とCFNMの世界に馴染む男子の姿があったのでした。