恐怖の校則

僕の入学した高校は、伝統的な学校らしくプールの授業でも男子は水着を着用しないらしい。
・・・ってことは、まさか丸裸で???
僕がそれを入学後に聞かされたときのショックも並大抵のものではなかったが、さらに衝撃的な事実が友達から齎された。
プールは屋内にあるのだが、中に入ってビックリ。プールサイドの斜め上には、ガラス張りの観覧席のようなものがあり、いつ保護者や来賓の方が来ても自由に水泳の授業が見られるようになっていた。
これでは、水泳の授業が他の生徒に丸分かりじゃないか−。
ただし、生徒の観覧についてはこちらが水泳の授業中の場合他の生徒も授業中であることが多く、便宜上は観覧できないという形にはなっているようだが、実際には遅れてきた生徒や早退の生徒などが通りすがりに見ていることは無きにしも非ずだった。しかもなぜか通行人は示し合わしたように女子ばかりだった。
あからさまにこちらを笑うようなことはしなかったが、それでも何かとこちらをチラチラと見ては足早に色んな人が通り過ぎていく。生徒は観覧禁止だろ、校則違反じゃないか−。
僕らはそんな生徒のことを先生に指摘してみても、まともに相手などしてくれなかった。
先生にしてみれば、むしろそんな小さなことを気にするよりも、もっと己の精神を鍛えよという、いかにも体育会系の考え方なのだ。まぁ、だからこそ今日まで全裸水泳というのもこの学校ではまかり通っているのかも知れないが・・・。
結局、僕らの全裸水泳を他のクラスの生徒が覗き見することについては事実上、黙認状態だった。
だから、特に準備運動のときや他の生徒が泳ぐのをプールサイドで待機しているときなど、いつ誰に見られていないかと気を揉むこと自体、考えてみれば無駄な抵抗に違いなかった。
とはいえ、裸であっても男同士は慣れるとそうでもないけど、服を着た、それも同年代の女子に上の場所から見下ろされることはどうあっても恥ずかしい気持ちが先に立った。
特に背泳で泳いでいるときに上と目が合うそれは、不意にお風呂で覗き見されたときの感覚ともまた違って、恥ずかしさを通り越して、気が変になりそうだった。
僕らは水泳の授業の後、プールから教室に戻るために廊下を歩いていくのだけど、前から歩いてくる女子と顔を合わせるたびに、さっきまで全裸でいた自分のことを見ていてそれを笑われている気がして、何か落ち着かなかった。
僕の話し相手といえば専ら男ばかりなのだけど、その中で紅一点、千紗と言う女の子がたまに話し掛けてくれたりする。
性格は温厚で明るく、この高校にいると何かと暗くなりがちな学校生活が、彼女によって少し安らいだりする。
そんな千紗があるとき僕のもとに駆け寄ってきた。
僕は彼女とアイコンタクトを取りながら、彼女の最初の言葉をいつものように待った。
しかし、僕の期待するものとは違って、それは思いも寄らぬものだった。
「藤本くん、こないだエスカレーターで前にいた女の子より先に乗ろうとしてたでしょ」
すごい剣幕だった。彼女のこんな表情を見るのは初めてだ。
性格が温厚とはいえ、こと男女間については厳しいようだ。
「だ、だって、あの時は本当に遅刻しそうで、、」
女=弱い・大人しいという僕の中での定説が、ここでは完全に覆っていた。そして、千紗は衝撃的な言葉を最後に言い放った。
「もしあの行為が教頭にバレてたら、藤本くん今ごろ女の子の前でフルチンで磔の刑にされてたわよ」
「そんな、バカな・・・」
「ウソだと思うなら、生徒証の校則第1章レディファーストの頂、見てみなさいよ」
レディファースト???
何のことだか・・・
僕は彼女の言葉があまりにも理不尽で馬鹿げたものに感じたので、自分の生徒証を胸ポケットから取り出し、すぐさま”校則”のページを開いた。第1章、第1章、、、レディファースト、レディファースト、と・・・あった!
どれどれ。
「・・・・。」
それを見た瞬間、僕は言葉を失った。
校内で男女が居合わせる場において女子より先んずる行為をした者(男子)は、その親告により女子の目前において全裸で磔の刑に・・・
「ここは校則に特に厳しい学校なのよ」
僕はこのとき背筋がゾッとなる感じを覚えるのと同時に、この学校に入学したことを心底後悔するのだった。
この春、晴れてある学校に入学を果たしたオレは生徒手帳を見て愕然とした。
オレは明日から、どんな顔して登校すればいいんだ・・・?
●本校生徒の目標・精神
元気・活気・気力の3つをモットーに
男は度胸、女は愛嬌の精神を育む。
余計な羞恥心はいらない、
必要な度胸をもとう
余計な情愛はいらない、
必要な愛嬌をもとう
男女に平等はいらない、
公平性をもとう
その為には・・・、
醜いものは隠さなければならない、だが醜くないものは極力隠してはならない。
誤認がなければ事実を公にしても構わない、だが偏見で相手を判断してはいけない。
以上のことから、本校生徒は校内において以下を正装とする。
○女子生徒は指定の制服を着用すること。
○男子生徒は何も身に着けてはいけない。
入学3週間後・・・
クラスメートの顔も全員次第に覚えてきたころ、女子もオレたちのアソコに慣れてきていた。
「私は覗いたことがない〜♪」
「や、やめろったら」
「ここをこうしてこうすれば・・・」
「ダメだって、、」
「ほら、あっという間に、、」
「キャーー!」
「飾りじゃないのよ、チ●コはハッハッ〜」
「あ、あぁ、、、」
「スキだと言ってるじゃないの、ホッホ〜♪」
「これ、そこで何してるの!」
「あ、やばい」「莉子、逃げるわよ」
今日もクラスの女子に弄ばれて、担任に目を付けられる同士がまた一人、、、
「何をそんなにボッキさせてるの!あらやだ、亀頭まで出しちゃって・・・、見苦しいから早く服を着なさいっ」
キャハハ/
「もうーっ、男子は連帯責任で居残りよ!」
アハハッ/
100%悪いのはクラスの女たちなのに、なんでオレたちだけが放課後居残りで説教されなきゃいけないんだ・・・?
「いい?オチンチンを自分勝手な都合で勃起させて、服を着させられることは、この学校においてとても不名誉で恥ずかしいことなのよ。」
服を着ることが恥ずかしい?
所詮、規則なんてものは最初の人間が都合のいいように作り出したものだから、その定義が分からないオレにとって、ルールを守らないことが恥ずかしいというより、ルールのそれ自体が恥ずかしいのだ・・・。
下校の時間〜
オレの連れ(孝仁)と帰ろうとするところを、今日もまた余計な"愛嬌"を振りまく女が二人、まとわりついてきた。
「アハハ、今日もフルチン生活ご苦労さまw」
「男女公平な学校だから、私たち優越感に浸るヒマもないくらいアレを見ちゃうっていうか、、、」
「うっせつぅーの」
「ところでよぉ、オレたちだけハダカになる意味ってなんだろ」
「そんなの簡単じゃない。」
「え?」
オレは孝仁に声を掛けたつもりが、彩香がそれに応じてきた。
「校則だからよ。」
そりゃ、その恩恵に授かっているヤツはみんなそう言うだろうよ・・・。
「それが訳分かんないんだよ」
孝仁はやはりオレと同じ思いだった。
「だよな、みんなそうだったら分かるけど、オレたち"男子だけ"だもんな」
「そうだよ、どこか間違ってる気がする、、」
「どっちもだったら学校の精神および公平性という概念に反するから仕方ないわよ。」
「まともそうな単語ばっか並べやがって・・・、お前は校長のまわしものか?」
「違うわよ。」
「しっかし、ウチの学校は困った規則だよな。」
「昔から規則は人のためにあるって言ってね・・・」
オレは孝仁に声を掛けたつもりが、彩香がまたすかさず応じてきた。
「男だけスッパダカって言うのが人のためか??何か誰かに都合のいいように解釈されてる気がするな。」
「あぁ、だよな。」
孝仁もオレに同調する。
「その"誰か"って、誰よ?」
今度は絢子が噛み付いてきた。
「さぁ・・・、アンタ含めたその他大勢じゃないか?」
オレは男と女の性質の違いによるところの"公平性"という盾に守られている女子が憎かった。
「いっとくけどね、私はそんないつでも頭(こうべ)を垂れたような、貧相なおちんちん見たって何の欲情も湧かないんだから。むしろこんなもの見せてすいませんって謝ってほしいくらいよ」
「おいおい、ウチの学校、"女は愛嬌"がモットーなんだぞ。それに反したら鬼校長が・・・、」
すると、彩香はそれまでの態度を一変させて、、
「あ、、オ、オチンチン可愛いよねー。ベッドで寝るとき、抱き枕にしたいくらい。」
「ウソつけ。」
女子でも油断はできない、それが鬼校長と呼ばれる所以(ゆえん)。。。
「お前に言われて、あらためてさっきまでハダカだったってことに気付かされるとやっぱ恥ずかしいな。」
「だけど、そんなに恥ずかしがらなくていいわよ」
「なんでだよ。。」
「どうせコーフンしたところで、"勃ちっこ"ないんだから。」
「そうそう、醜くないものは隠しちゃダメなんだよ」
「成人男性に比べたら、アンタなんか赤ちゃんみたいにカワイイものよ」
「は、恥ずかしー」
ここは校外ゆえに今は服を着ているにもかかわらず、孝仁のヤツ、彩香にからかわれて股間を押さえている。
もうさんざん校内で毎日ハダカを見られているから、アイツにとってもはや服を着ているか着ていないかは問題ではないのだろう。
しかもこのどうにもならない連鎖は学校に通う間は今後も続く。
「あー、早く年をとって醜くなりてぇ」
"アソコさえ醜ければオレは女の晒し者なんかには・・・"
だがそう考えること自体この学校の治外法権の考え方に縛られているわけで、、、
「ムリムリ、あんな可愛いオチンチンじゃ当分ムリw」
「チ、チキショー」
「アハハハ」「キャッハハー」
まわりで女どもの笑いが飛び交う中、今日も股間の辺りが疼くような感覚を覚えながら、オレは家へと向かうのだった。